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GMBA見聞録:曽我晃久さん (GMBA 2018) 第二部

Episode3: 混迷するグループワーク

 

木曜日の帰宅途中、スマホを取り出し、プレゼンテーションの仕上がり状態をチェックする。グーグルドライブに保存されているパワーポイントは、昨日から何の変化もなくblank sheetのオンパレード。みんな一体何をしているんだ。今度の土曜のVCではプレゼンテーションがアサインされているというのに。怒りにも近い感情がこみ上げてきて、混雑する電車の中揺られながら、すぐさまWhatsAppで送信。

 

“Guys, your part is still missing. Due date is today! What is going on?”

 

しばらくすると、同僚達から次々とメッセージが入ってくる。

“I will update my part and upload tonight”“Sorry, I can’t. I am on business travel this week”

“I thought the dead line was Friday”

 

 

何てこった、信じられない。“Give me a break! No more excuses!”とタイプしたが、送信するのはグッとこらえた。「グループワークって一体何なんだ」そうつぶやくしかなかった。

GMBAで得られたもの3:国際的なビジネス環境下でのリーダーシップ

 

WhatsAppでのこんなやりとりは、普通にあります。事前に聞いてはいましたが、時間の感覚が日本人と外国人は全く違うというのを、GMBAではまずもって体感することになります。Skypeミーティングの時間にメンバーがそろわない、担当タスクの締切日にメンバーからアウトプットが出てこないなど。

また、みなさん一家言ある人が多く、スケジュールがタイトにもかかわらず、チャット上でメンバー間の意見が対立し、まとまらないこともあります。昨晩グループで確認した内容が、一人のメンバーの反対意見によってまた振り出しに戻り、グループ内に緊張が走ることもありました。

 

逆に、少し時間が経過して慣れてくると、微妙な譲り合いの精神(悪く言えばFree Rider)も出てきたりして、具体的なアウトプット作業がなかなか進まないというフラストレーションを感じるケースもありました。今となれば、これらの経験こそが異文化の多様性を受容する貴重な訓練だと思えるのですが、第1ターム当時はイライラの連続でした。

 

第1タームの経験を踏まえて、第2ターム以降は、グループに課題がアサインされるとすぐに、私の方でタスクスケジュールを明確化して担当を割り振るとともに、アウトプットのベースドラフトを作成して、グループワークをリードしていきました。

毎週毎週、メンバーも毎日の勉強で、土曜のVCの後は疲れ切っています。常に2科目同時並行でVCとForumをこなしていくのですから、睡眠時間もままなりません。

そこで日曜日中に私が上記ドキュメントを用意して、月曜以降それにメンバーがフォローする形で、グループワークを進めていきました。

レポートであれプレゼンテーションであれベースドラフトは、どこまで作りこむかがポイントです。あまりに作りこみすぎると、アウトプットに貢献できる余地が少なくなり、メンバーに不満が溜まります。また、逆にシンプルなアウトラインの提示だけですと、どのようにタスクを進めていいか困惑するメンバーも出てきます。

 

私が作成するベースドラフトは、幸いにもメンバーから好評であり、英語力のハンデを負いながらも、日本人の強みであるきめ細やかさを生かしたリーダーシップを発揮できたと思います。おかげで、ターム終了時には、メンバーからポジティブなフィードバックをもらうことができました。

 

また、逆にクラスメイトからもリーダーとしてのあるべき姿を教えられました。アカウンティングの科目は、私が苦手としていたため、コンゴの方がリーダーシップをとっていたのですが、私が担当パートの作業にビハインドしていると、タイミングよく個別チャットでサポートしたり、レポート作成ではProof Readingまでしてくれました。リーダーというのは、自らが汗をかくとともに、メンバー一人一人に合わせてフォローするのが、あるべき姿であるということを、身をもって教わりました。

 

Episode 4: GMBAのクライマックス ファイナルプロジェクト

いよいよ今日は、ファイナルプロジェクトのピッチの日。我々のチームは、13時から101教室で開始。

スマートフォンを活用した皮膚がん診断システムと遠隔医療仲介サービスがテーマだ。緊張の中、15分間のプレゼンテーションが終了。メガネをかけたファイナンスの教授が、ビジネスプランレポートを読み終えるほどなく、矢継ぎ早に質問が発せられた。

 

「スマホの写真だけで、本当に技術的にSkin Cancerかどうかの判断ができるのか?」

「最初の認証アプリの開発費用はどのように調達してくるのか?」

「誤診の際の賠償責任リスクには、どのように対処していくのか?」

 

いいぞどれも、事前に準備していた質問だ。前日に丸一日かけてリハーサルしたかいがあった。最後にアドミが笑顔で言った。「Final Examはこれで終了です」

教室を出るなり、メンバーみんなで“Well done!” “Good Job!” とHigh Five。

カフェテリアへ向かう廊下でも、クラスメイト達とただただ肩をたたきあい労を労った。言葉なんぞもういらない。多くの苦楽があったファイナルプロジェクトが、ついに終了したのだ。

 

GMBAで得られたもの4:イントラプレナーシップ

 

コースの最後に課されるファイナルプロジェクトでは、スマートフォンを使用したオンラインクリニックに取り組みました。

皮膚がんの発症率が世界一のオーストラリアをターゲットにしたビジネスで、スマートフォンを使用したSkin Cancer判定システムと遠隔医療仲介サービスが、我々のプロジェクトでした。

私は医療のビジネス分野は詳しくなかったのですが、幸いにもメンバーに心臓外科医と放射線科医の方がいらしたので彼らが、詳細なAppsの仕様ならびにビジネスモデルをデザインしました。それに加えて、IT出身の方がデモ画面を作り、マーケティングの方がプロモーションプログラムを、そして私がファイナンスを担当し、各人のエキスパティーズをフル活用して、スタートアップを疑似体験することができました。

 

ビジネスプランでは、システム開発費用、人の採用計画、資金調達等のビジネスプランを現実さながらに策定していきます。また、ファイナルピッチでは、審査員よりテクニカルな側面はもとより、誰がいくら出資し、株式の持ち分をいくらにするか、VCに出資分をどの程度するかといったことまで聞かれることを想定して、準備を進めていきます。その段階になると、メンバー間での株式持ち分をどうするか、持ち分をとるならメンバーが実際にどこまで資金を出資できるかといったことまで話合うため、緊張感がありつつも熱いプロジェクトになりました。

 

会社勤めの身ですと、事業計画を策定する機会はあっても、株式持分といった資本政策まで検討する機会を得ることは、なかなかないのではないでしょうか。そういった意味では、このファイナルプロジェクトは、当方のイントラプレナーシップの見識を深める貴重な経験となりました。

 

Episode 5: 卒業式 Forever IE

ファイナルプロジェクト終了の余韻もそこそこに、気が付けばもう卒業式の日。MBAを修了したことは嬉しいは嬉しいのだが、GMBAで出会えた同級生達とは、式が終わればしばらく会えなくなると思うと、一抹の寂しさも。

 

クラス全員ガウンを着ています。みんなで集合写真をとったり、仲のよいもの同士スマホで写真をとったり、惜しむように最後の時間を楽しんでいました。

 

卒業式では、どなたからか頂いたスピーチの、“Graduating today from this school, you are the leaders, opinion-makers and problem-solvers of tomorrow” という言葉に、目頭が熱くなり、気が引き締まる思いに。

 

式も終わり、会場の外にでるとIMBA、EMBAやロースクールの人たちも交じりあって、グラスを片手に歓談がなされています。マドリッドの夕陽のなか、私もクラスメイトを探し、互いの未来に乾杯をしてまわりました。気が付けば、さっきまで付近にいたクラスメイト達が、だんだんと家族や友人の元へとフェードアウトしていきます。22時もまわり、辺りは暗くなってきました。グラスやフードの後片付けが、ぽつぽつと始まりました。会場から帰路に向かう人も増えてきました。長くもあり短くもあった私のGMBAライフも、どうやらこのあたりでフィナーレを迎えつつあるようです。

 

喜びと寂しさが混じりあうホテルへの帰り道、WhatsAppを開く。Forever IE、Forever GMBA、いつかまたみんなで会おうぜと万感の思いを込めて、Class Groupに送信しました。

“Thanks, guys. Good luck and goodbye. See you next time‼”

 

GMBAで得られたもの5:Pricelessなネットワーキング

 

GMBAでは、どれも一週間ですが普段クラスメイトと会えない分、F2Fの期間は、勉強はもちろんソーシャライジングも集中して行います。夜の9時、10時くらいまでグループワークを行って、それからディナーもかねて街に繰り出します。

そのため、時差ぼけとあいまってAround the clock でクラスメイトとずっといる感じにもなります。同じ釜の飯を食べる仲間といっても過言ではありません。

最後のF2Fでは、それまで実際に会っている時間はそれほどでもないのに、目の前にいるクラスメイトが、まるでもう何年も知り合っている旧知の友人と錯覚するくらいです。

GMBAのネットワークは、Pricelessです。世界各国のクラスメイトとはWhatsAppやFacebookでつながっており、今でも近況報告や出張などで再会したメイト達の写真がアップされるなど、まったく色褪せないものとなっております。

 

おわりに

 

以上長々とGMBAで経験したことと、そこで得られたものについて記してまいりました。リーダーシップ、ネットワーキングもそうですが、それらも含めてGMBAで得られた最も大きなものは、グローバルスケールでの経営者視点と、どんな困難にあってもそれを乗り越えられるという自信です。世界中からきた優秀なクラスメイトと切磋琢磨するGMBAの環境がなければ、そのような視座は得られなかったと思います。

 

IE GMBAは、Blended Programですが、他のプログラムと比べてもその内容の充実度、満足度には何ら遜色ないものと言えます。各種テクノロジーが発達した昨今では、Web会議システム、Skype等を活用してリアルタイムにかつ自宅で授業やディスカッションをインタラクティブに行うことができますし、グローバル企業での働き方を疑似体験できるプログラムとも言えます。

 

それゆえ、Blended Programだから勉強やネットワーキングが不十分であるということは全くなく、むしろBlended MBAだからこそ、日本人ならでは丁寧さ、思慮深さといった強みが十分に発揮できるプログラムだと実感しております。

おかげさまで成績優秀者に授与されるDean’s List Honorsを受賞することができ、私の人生のアルバムには欠かせない貴重な期間となりました。

 

Top10スクールでありながら、現在の仕事も続けることのできるGMBAは、ダウンサイドリスクを抑制しつつ、アップサイドリターンを享受し、則仕事に活用できるROIの大変高いMBAプログラムではないでしょうか。

 

私の方は、現在はグループ全体でのリスク管理を行う部署にて、海外子会社とのWeb会議、グループ資本管理といった業務で早速にGMBAの知識・経験を活かしております。

 

このBlogを読まれた方の一人でも多くの方が、GMBAに関心を持たれ、充実したGMBAライフを過ごされることを祈念いたします。