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GMBA見聞録::曽我晃久さん (GMBA 2018) 第一部

GMBAを選んで本当によかった。全力疾走してMBAの夢をかなえた。今の自分に悔いはない。

“I am honored to communicate that you are part of IE’s Dean’s List. Congratulations!“

 

メールを開けた瞬間に飛び込んできた予想外のメッセージ。

感極まって、無意識のうちに涙が。“I did it. I did it! I feel great!” と叫びながら、宿泊先のホテルメリアの部屋で何度もガッツポーズを決めていました。

 

同時に、GMBAで経験した辛かったこと、楽しかったことのすべてが、脳の奥底からあふれるように流れ出てきました。

 

 

初めてのMadrid でのFace to Face Weekで、英語で思うように発言できず、質問責めになって落ち込んだこと、ForumでFacultyやクラスメイトから褒められたこと、グループワークでイライラし通しで苦労したこと、WhatsAppでクラスメイトとたわいもないことも含めチャットしたこと、かけがいのない同級生達とワインを片手に再会を喜びあったこと、言い争いをときにはしながらも、最後はハイタッチでファイナルプロジェクトを終えたことなどなど、これ以外にもありとあらゆる思い出が、寄せては返す波のように頭の中をかけめぐりました。

GMBAで何を感じ、何を学んだか

2017年4月Intakeの曽我です。今年の7月にGMBAを修了いたしました。

MBA留学をめざしている方のなかには、海外MBAに行きたいけれども、会社を辞めて留学するまでのリスクをとることに躊躇する人が、少なからずいるのではないでしょうか。

 

私もそのようなMBA志願者の一人でした。長年海外MBAを夢見ては、現在の会社でのキャリア、家族の理解、年齢の壁といった現実に直面するにつけ、もう海外MBAのことは諦めようと考えておりました。

 

そのような矢先に、IEのGMBAプログラムに出会い、自分自身の一つの夢をかなえることができました。GMBAの素晴らしさを、一人でも多くの人に知っていただきたく、今回ペンをとる次第です。GMBAの概要は先人の方が書かれていますので、私の方ではGMBAでリアルに経験したこと、感じたこと、GMBAを通じて得られたものについて、印象に残ったエピソードを切り出しながら記していきます。

 

 

Episode 1: Face to Face weekでの洗礼

GMBAが始まると早々にマドリッドでのF2F weekが始まります。現地でのクラスメイトと初顔合わせもそこそこに、オリエンテーションが終わると、いよいよ授業開始です。

 

初日のクラスはCommunication and Presentation Skill。CNN出身の先生が、さっそうと現れて早口のアメリカンイングリッシュで自己紹介を始めました。

ほどなくすると、「これからBPのメキシコ湾での原油流出事故に関して、BP社長であるTony Hayward氏の記者会見のビデオを見ます」といって、ビデオを流しはじめました。BPの社長が動揺しながら、記者会見を行っている映像でしたが、半分くらいしか言っていることがわかりません。ビデオが終わると、「では、これからプレス対応のトレーニングとして、BPの模擬記者会見を行います。誰か、BPのCEOの役をしたい方はいますか」とファカルティーが、クラスに視線を投げかけます。皆が積極的に挙手しますが、私は下を向いて「どうか、どうか私には指名しないでください」祈るしかありませんでした。

 

BPのケースでは指名は逃れたものの、さらなる試練が押し寄せます。ファカルティが笑顔で、「ではこれから、リーダーとしてのプレゼンテーションのトレーニングをしたいと思います。何でもいいので、あなたがこれまでに経験したリーダーシップについて語ってください」と言い、即興でのプレゼンテーションが求められました。今回は祈りは通じず、万事休す。とうとう私が指名されてしまいました。

 

皆が拍手するなか、私は教室の前に出ていきます。表情がひきつりながらも、何とか笑顔でクラスメイト達に視線を送りかえしました。MBAのエッセイで書いた内容を思い出しながら、スピーチをはじめていきました。私の話がありきたりのためか、クラスの反応は微妙な感じ。2分程度のスピーチにも関わらず、もう口の中はからからです。その後はクラスメイトからの質問責めでたじたじに。続いてデリバリーについて容赦ないフィードバックがきます。「アイコンタクトが十分でないよ」「スピーチに感情をこめるともっとよくなる」等々。どれも、どれもありがたい建設的なフィードバックなのですが、質疑応答で意気消沈した私の耳にはほとんど入ってきません。「早く、早くこの授業が終わってくれ」と念じながら、その後を過ごしました。

 

GMBAで得られたもの1:プレゼンテーションスキル

 

上述のように最初は大変な思いをしましたが、その後のGMBAの期間を通じて、英語でのコミュニケーション力の向上はもとより、プレゼンテーションのケイパビリティを高めることができました。クラスメイトの中には、プレゼンテーションの内容をドラマ仕立ての動画に編集して発表したり、GMBAならではありますが、PCの画面上でのPollを駆使してインタラクティブ性を高めた発表を行うなど、エンターテインメント的要素も含めた内容、デリバリーにもなっており、レベルの違いを実感させられた次第です。

 

当方も現在の仕事でも英語でのプレゼンテーションを行う機会がありますが、GMBAの経験を踏まえて、インタラクティブかつユーモアセンスも含めたデリバリーができるようになり、セミナー後のお客様からのフィードバックも上々です。

 

Episode2: Forumでのせめぎ合い

GMBAが始まって以来、出張にせよ帰省にせよ常にPCを持ち歩いて、Forumをチェックするのが習慣になってしまった。というよりか、そうでもしないと時間がとても足りなくて、Forumについていけないのだ。

 

“Good afternoon ladies and gentlemen. Welcome on board ANA, a member of Star Alliance flight ###”のアナウンスもそこそこに、今回もすぐさま機内でForumをチェック。

 

実はForumでも皆それぞれに戦略があるようで、なかなか面白い。まだこちらはケースも半分しか読み終えていないというのに、いつもいの一番で威勢よく意見を投稿しているのはスイスのAlirezaだ。マラソンで言えば、先行逃げ切りタイプ。ノルウェーのPradeepは、敢えてForumで20人くらいのコメントが出てくるのを待ち、斬新な意見を切り込む後半追い込み型。私の場合は、主に図表を活用したVisual系で論を展開する作戦。

 

ただ、今週のトピックはコーポレートファイナンスで、ちょっと一筋縄ではいかない。

 

“According with this financial report of Pixar previously to the M&A. How much money does Pixar cost?”

 

DisneyとPixarの合併に関して、Pixarの企業価値算出のお題が月曜日に出されてから、既に丸1日経つも誰も投稿していない。いつもはりきってコメントしているAlirezaも、今回は静観を決め込んでいるようだ。具体的な数字が問われているから、最初にコメントするのは、少し分が悪い。資本コストや永久成長率の前提も、突っ込まれないようpersuasiveなものにしておきたいところ。

 

ここはどうしようか。コーヒーを飲みながら、しばし熟考。DCFやEV/EBITDAの計算が多少間違っていても、早めにFirst Moverでまずポイントを稼ぐか、それとも誰かがコメントした後に、少し視点を変えてPost M&Aのガバナンスの重要性の観点からの意見を投じようか。

 

GMBAで得られたもの2:視野の拡大

 

毎週のForumでは、Cooperativeな雰囲気ながらもCompetitiveな意見出しに向け、ちょっとした駆け引きがあります。基本的な質問に対しては、回答するのに苦労はしませんが、低い評価ポイントしか稼げません。他人と異なる視点を投げかけたり、難易度の高い質問への回答が高ポイントにつながります。毎週のForumで投稿できる数も限られていますので、戦略的にアプローチすることが求められます。

 

そんなことも楽しみつつ、このForumは私の視野を広げるに大変役に立ちました。私はこれまでコンサルティング会社と金融機関での勤務経験がありましたので、コーポレートファイナンス、ストラテジー関連の科目については、肌感覚があるところでしたが、GMBAの授業はより実践的な内容でした。

例えば、先のDisneyとPixarのM&A時における企業価値算出とPost M&Aの組織設計の検討などは、机上のお勉強といったレベルではなく、そのまま実務レベルで応用できる内容でもありました。IEで学習したことを、翌日から即座に業務に活用できる点はGMBAの長所の一つです。

 

一方で、オペレーションマネジメント、サプライチェーンは経験のない分野でしたので、当該業界出身のクラスメイトの経験やForumでのディスカッションは、私の知的好奇心を大いに掻き立てるものでした。この2科目においては、日本関連のケースも使用されていました。日本の回転寿司のスシローによる顧客行動のBig Data解析、米国NYのレストラン「ベニハナ・オブ・トウキョウ」による店舗レイアウト戦略などは、オペレーションマネジメントの奥深さを感じるとともに、日本人によるビジネスセンスの魅力を再確認した次第です。