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卒業生インタビュー:石井 邦彦さん (IMBA2017)

 

社費でIEへ留学する方も毎Intakeおり、卒業後様々な活躍をしています。社費制度がある企業群は、一般的に金融やメーカーが多いですが、大手総合建設会社の清水建設に社費でIEへ派遣された、石井さんにお話を伺いました。

全体を俯瞰するスキルが役に立ってきている

留学から戻ってきた当初は不動産開発部門でまさに開発用地を仕入れてくる部隊に戻りました。その後1年半ぐらいして、この春から本部内の経営企画的なセクションに配属になりました。

中期経営計画というものを最近新しく出しているんですが、非建設事業というカテゴリに不動産業があり、そこの利益を2023年までに増やそうという計画があります。その本部としての計画を作成し、前線の人たちと一緒になって実行戦術を考える部署です。プラス、本部のトップを政策秘書的に補佐する業務も担当することになりました。

トップダウンで実行に移すという意味では戦略に関わると思いますし、逆にこちらからボトムアップで意見を言う機会もあるので非常に面白いです。IEで学んできた全体を俯瞰するというのが今まさに役に立ってきてるかなと思います。

 


 東京大学では専攻が宗教学でしたよね。バックグラウンドとしてはユニークですね。

 


そうですね。文学部で宗教学ですね。清水建設には2007年に新卒で文系の総合職として入社しました。文系総合職ははじめは建設現場で研修するというのが当時ありまして、自分の場合大阪で某電機メーカーさんの工場を作る現場でした。会社としても大きなプロジェクトでした。自分は作業員の方々が乗るバスを、駅から現場まで手配するという仕事で、毎日バス会社と交渉しながらダイヤを作るということを1年半くらい経験しました。

 


 建設現場の作業員の方ってかなり多いんですよね。

 


1日最大5000人くらい、往復にすると1万人くらいバスに乗ってましたね。そのあと大阪の支店に戻りまして、経理部に配属になり、そこで3年半ぐらい勤めました。4~5年経ったところでローテーションがあり、東京へ帰りメインバンクさんに一年間出向し、不動産ファイナンスの部署で勉強をさせていただきました。

その後本社に戻り、銀行での経験を生かせる投資開発本部という、不動産開発をする部署を希望して配属されたというのがざっくりな経緯です。

 


その後、MBA留学。

 


投資開発本部に来て、一年半くらい経った時ですかね。当時の本部の幹部の方から留学の機会をいただきました。色々な経緯があったんですが、お話を頂いてから割とすぐに留学しなければいけなくなって、出願まで半年ぐらいしかない状況だったので、周囲にも協力をいただきつつ準備をしてなんとか合格したと。

 


今のお仕事でのフォーカスは?

 


先ほどの中期経営計画で不動産部門として出しているターゲットの数字ですが、国内外含めてです。海外は今はASEAN圏での投資が中心ですが、それをもう少しポートフォリオを広げることも頑張らなくちゃいけない。

プランニングだけじゃなくて実行に近いところまで主体的に頑張りたいなと。

 


 5000億円。5年で投資する不動産開発。想像がつかないですが、ビル一棟でだいたいいくらくらいするんですか。

 


例えばこの本社でどうですかね、ざっくり市場的な価値にしたら数百億でしょうか。

5000億と言われたらじゃあ10億円の物件だと500件ですから、じゃあもうちょっと大きなものを集中的に買おうとかいったことも考えていかないといけない。それから海外はアジアでも特にシンガポールは法制度も進んでいて開発の許認可なんかも割とスムーズに済むんですけど、まだ伸び盛りの国なんかに行きますとそこが読めないですよね。

でも他が参入しきっていないところをやるのかどうかって話なんですよね。それを見極めるために現地に行ってみたり。やっぱり行ってみると伸び盛りの国はすごいですよね。

 


 この間もどこかに行ってましたよね。

 


最近出張ばかりなんですよ。インドネシア行ったり、シンガポール行ったり。インドネシアについてはとにかく活気がすごい。街がどんどん変わってる。

こういった国で投資するのか、安定した国で厳しい競争の中でやるのか、戦略を考えるのは面白いですよね。

 


建設会社ってビル建てる以外にやっていることってあまり一般の人にはイメージつきにくいですが、どんどん外にも出ていっているんですね。

 


建設って本業は非常にシンプルだと思うんですよね。お客様からお仕事を受注してビルなり工場なり何でも建てて引き渡す。でもそれだけだと今後国内は人口減にともなって需要がある程度シュリンクしちゃう。

じゃあ合併で規模を拡大すればいいのかっていうと、多分1+1やったときに2になるってどこの会社も思ってないんですよね。多分1.5ぐらいになりそうって。

だからやっぱりどの建設会社も海外進出とか、不動産だったり、エネルギー事業、太陽光発電とかをやるだとか。うちの会社だとあとは宇宙ビジネスとか海洋関係?

 


宇宙、海洋資源?

 


宇宙はですね。うちも宇宙にロケットを打ち上げる会社に実は出資していまして。小型のロケットをどんどん打ち上げて衛星を打ち上げるっていうのに参画しようと。そのためのロケットの発射場みたいなんをつくるって話があるんですよ。

そうした事業をフロンティア事業って呼んでいるですけど。今建設業界はどこも絶好調なんでなるべく好調な間に新しい分野に投資して5年間の間に成長させていこうと。

MBA留学したら会社としてどういう事業に取組んでくのかとか会社全体を考える部署に行ったりすると面白いんでしょうけどね。今自分はその中の不動産の中で色々と考えている。そういう状況なんです。

 


 大きな会社だからこそ、いろいろなキャリアの可能性がありますね。

 


 本当は全社レベルでこういうの考える部署と交流したりするのもいいかなあと個人的には思ってますけどね。

 


 宇宙とか、再生可能エネルギー関連とか。次世代ですよね。ベンチャー投資もしているんですね。

 


そうなんですよね。世の中の流行にただ乗っている、というわけではないんですけど。これも自分が留学行く前はなかったんです。留学から戻ってきたら部署ができてやりはじめてて。

IEはアントレが強いので実際授業を受けましたけど、当時は不動産部門に戻るだろうと思っていたので、実はあんまり興味なかったんですよ。ラボもビジネスインパクトで会社をどう変えていくかっていう選択を取っちゃいましたから。それが帰ってきてみたら、こうやってベンチャーに投資するだとか、アントレ的な動きが世の中的にも強まってきてるし、自分の会社でもやろうとしているので、もうちょっとアントレ系の授業を取っといても良かったなと。

ただ会社に留学から帰ってきた時に、会社がどうして新しい事やろうとしてるのか、留学前に比べてだいぶ前向きにすっと入ってくるようになりましたよね。

 


社費生はまずは戻ってきて、中で色々やってみたらいい

マーケティングとかオペレーションとか、今まで業務で触れなかった科目は新たな知識を習得したという意味ではよかったです。でもMBAの必修科目って、技術者とか研究者とか色んなバックグラウンドの人にも対応しているので、学問としてそれほど難しいことは多分やってない。だけどそれをグループワークとかディベートでいろんな意見が出るところが難しい。日本企業でどこでもあるような阿吽の呼吸がまったく通じないところに入っていって、ダイバーシティを実戦で感じられたってのが一番大きいのかな。

ダイバーシティという意味では、ESG投資やSDGsといった世の中の動きがあるので、企業もそれに対応すべく変わりつつあるところ。だけど会社でずっと日々の仕事に追われていると、なんでこんなことやってるのかなって、実は結構実感がわかない。自分もMBA卒業した後だからこそ、社会の要請だとか、ダイバーシティがあると会社としてどんないいことがあるのかが考えられるようになってくる。

 


IEのダイバーシティ、出身国、業種、さらに考え方や育ち方までもそれぞれが違うという環境でしたが。


英語でのディスカッション、中々入り込めない日本人多いじゃないですか。多国籍でのグループワークの時、色んな話を聞いた上で意見調整というか、方向性を修正するような感じの日本人は多くて、自分もそうだったんです。

でも留学から帰ってきて気づいたのが、社内で部署横断型で2050年の清水を考えよう、というセッションに参加した時です。

その中での日本人同士でのディスカッションでも、みんなの意見を聞いてから折衷案を出したり。結局はそこって実は変わってない。

 


 最初から自分のスタイルがあったわけですね。でもそれはいかなきゃわかんなかった?

 


と思いますね。それは良かったです。

 


そもそもIEに何で入ったんですか?

 


会社の方で1年間という制限があったんで、ヨーロッパが中心だなと。最初は色々なところを考えたんですけども、何かスペイン非常に楽しそうだなぁと。色々な話聞くと非常に面白そうだし。

IEあんまり小規模校じゃないのでエレクティブの選択肢も多そうで、小規模校の場合はエレクティブがやっぱ少なそうでしたよね。多分それはそれでカチッとした感じなのかも知れないですけど。

結構IEって日本でも色々パーティーとかアルムナイの集まりあったりして、話を聞いてると楽しそうでしたよね。

会社でいつも、スペインでお前遊んで来たんじゃないか、って言われますよ。楽しんで来ましたよって言いますけど。笑 

人生の中で1年くらいそういうのがあっても良いんじゃないかなって。私の場合妻と子供が日本に居て、単身で留学したんですが、程々に旅行も行きましたね。渡航したばっかりの8月とか。後は2学期が終わったくらいのタイミングだったり。ちょこちょこ休みがあると行ったりもしましたけど、あまりに旅行に行ってると日本に帰ってきたときとか、妻からクレームが入るので。程々に。笑 

 


 シンガポールにも行かれてましたよね。1週間のSMUのショートプログラム。

 


そうですね。あれも良かったですね。IE、もしマイナス面があるとするとアジア人は全体の中で少ないですよね。今、アジア枠十何パーとかだと思うんですけど、アジアって言っても中東くらい。中国人とか、他の学校行くと多そうな国の人が実は少なかったり。

自分の場合会社が海外展開もアジア中心だったりするのでもう少しアジアの話やネットワークが出来るとよかったかなと。これは欧米のスクールだとどこでも同じかもしれませんが、IEではアジアのケースとか実は少なかったりしますよね。

SMU行った時、アジアでのケーススタディーが題材として選ばれてたんで。本当に面白かったなーって。ちょうど1週間っていうのも期間的にちょうどいいくらいでしたし。

 


 最後に、これからMBAを受ける人、特に社費受験生に向けて何か一言。

 


社費の人は当然会社へ戻って来るのが前提なんで、受験校選びについてそんなに思い詰めなくて個人的にはいいのかなって。

自分のイメージで言うと、社費の人って世の中的にはエリートというか育ちの良い人が多いと思うんですよね。いい大学を出て、いい会社に入っていい部署で働いて。本流を進んできた人が多い。でもそういうとこにいるとベンチャーだとか、世の中で起きてることって知らなくても別に社内では生きていけちゃう。とはいえせっかく社費という形で1年間外に出るんで、色々な意味で視野を広げる留学ができるといい。

あと、国の話をするとアメリカとかイギリスって英語が通じるんで生活面では非常に楽ですよね。でも折角だったら面白い環境に飛び込んでみるといいかもしれない。一生の内にそうそうスペインには仕事で行くことはないですよね。

今、世の中的に定年もどんどん伸びているんで会社員人生、何年あるかわかんないんですけど、その内の1年間くらい面白い国に行って面白い体験するっていうのも良い。あんまりプレッシャー感じずに、受験校考えてもらいたい。

会社戻ってきた時に気張っても正直、いきなり何かが変わるわけじゃない。社費の場合は日本帰ってきたからって別に昇進するわけでも普通ないですし、自分の場合元いた部署に戻ってきてますし、配属先を選べないことも多いと思うんで。なんのために行ってきたって留学から戻った後、最初は非常にわかりづらいことも多いと思うんですよね。

そういうとき、自分が今そこに置かれている意味が分からなくなってしまって外への転職を考えたりとかもあると思うんです。でもまずは戻ってきて、色々中でやってみたらと。

うちの場合せっかくMBA行ったんだから部署横断的な会に参加してこいとか、そういう話をいただくことが多く、色々な人と社内で知りあいになる機会も増えて、同じ会社でも実は色々なことやってるんだなーって改めて知ったり。そういうチャンスをもらえてるのは非常にいいですね。

それぞれ留学前にもともと持ってた想いもあると思うんですよね。MBA取った後会社をこうしたいとか、こういった部署を作りたいとか、色んな想いがあって社費の人は留学すると思うんですけど、それを実践する機会を伺って頑張ってほしい、そういう感じですね。