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卒業生インタビュー:岩田洋一郎さん(IMBA2011)

観光や参拝客で賑わう鎌倉。そのメインランドマークである鶴岡八幡宮から程近い大通り沿いに2017年12月に開店したVERVE COFFEE

西海岸発のサードウェーブコーヒー店で、IE卒業生の岩田洋一郎さんが日本展開を担っています。開店して2ヶ月ほど経過したところで、お邪魔してコーヒーを頂きながら、お話を伺うことが出来ました。

 

 

岩田さんはNYの大学でマーケティングを専攻、卒業後IBMへ入社。航空会社向け営業として大型アウトソーシングディールを担当。ご両親もそれぞれ起業をしているため、いつかは自分も起業するのだという思いでMBA留学を決断。なかでも自由な校風で相性が良さそうだという理由で、IEを選択しました。

 

IEについて印象に残っているクラスはアントレのワークショップでビジネスプランを書く授業。イタリア最大のファミリーワイナリーを保有するクラスメート(のちにEATALYのオーナーになる)がおり、一緒にフードビジネスのビジネスプランを作るなど、興味の分野が近い人たちがいて、岩田さんにとって面白い経験ができたそうです。

 

2010年にIE Business SchoolのIMBAを卒業し、Googleでキャリアを積んだ後、起業。IEの卒業生の中でもとてもアクティブで、卒業後数年にわたり、IEのJapan Alumni ClubのRepとして、卒業生同士の交流を深める為、定期的にカクテルなどイベントを開催し、日本でのIE卒業生ネットワークの礎を作ってくれました。

VERVEについて

新宿店もそうですが、かなりオシャレなコーヒー屋さんですね。さて、まずはVERVE自体について教えていただけますか?


カリフォルニア(以下CA)のサンタクルーズをベースに、元々ジャズをやっている2人組が作った会社です。CAの外には基本的に出て行かないというローカルな人たちのブランドで、CAに全体で8店舗あります。ユニークなのはホールセールで、シリコンバレーの有名企業はたいていうちのコーヒーを飲んでいて、Facebook、Airbnb、Salesforce、Dropbox、Uberとかは全部うちのコーヒーですね。


VERVEは基本的にすべて直接コーヒー豆を買い付けし、お客様に提供するところまで一貫して責任持つという、いわゆるサードウェーブのプラクティスをまじめに実行している会社。新宿駅のNEWMANのテナントに入れるコーヒー店を海外から探してくる仕事を岩田さんが依頼され、そこから始まりました。

基本的にCAの外には出て行かない、というポリシーがありながらも、サンタクルーズで会ってすぐに相性がよいことが分かり、VERVEとしても「Go Westだから日本なら良いんじゃないか」と話が進みました。

約2年前にNEWMANに日本第一号店をローンチし、現在はアジアの他の国々の展開も検討しているとのことです。

買い付けからお客様の手元に届くまで一貫する。そこがこだわりなんですね。さて、今後の展開予定は?


次は表参道に3月にオープンして、来年六本木に店舗を出します。また、ディベロッパーさんと京都でやる話をしています。あとはアジアの国々でやるかどうかを検討しているところです。


すべてはつながっている

IE卒業後に就職したGoogleでは、営業やマーケティング、プロダクトセールスを担当し成果を上げていきました。その中で成長分野ならではの悩み、すなわち、自分がやったこと以上に成果がどんどん上がっていくことについて、徐々に焦りを感じていったそう。

とにかく、自分がやったことがダイレクトにわかることがやりたかった。成長している市場を感じる一方で、キャリア的にはやばいなって感じがしていました。で、友人とそろそろ起業しようか、と。自分たちが出来ること、好きなことを考えた結果、輸入食材のECの会社を作りました。でもこれが実際やるとものすごく大変。そして、僕のビジネスパートナーは物流に課題を見つけ、自分で物流の会社を立ち上げたんです。お互いハッピーな形で別の道へ進みましたね。実は彼のところに今、IEの後輩がCFOで入ってますよ。(笑) 

僕は僕で、食材のドメインでもうちょっと頑張りたかったので続けていたら、先ほどのNEWMANのテナントの話があり、今に至ります。だから、全部つながってるんですよ。


なるほどそうつながるんですね。これまでのテック系企業のビジネスとは全くコンセプトが違いますね。


コーヒービジネスっていまどきのビジネスなんですよ。インターネットがくる前の時代って情報と物流の観点から、こういうマイクロのビジネスって難しかったんです。でも今は物も情報も豊富にあるので、小さいロットでも色々できるようになって、会社としてちゃんと利益を出せるし、農園もハッピーになる。農園と街をつなげる。それが僕らのキーコンセプトなんです。


IEで岩田さんと同じグループにいたイタリア人クラスメートはLAVAZZAのアメリカ支社長に就任、また別のクラスメートはブラジルで有数のコーヒーチェーンのオーナーになっていたり、さらにドバイの友人が今まさにサードウェーブコーヒーショップを立ち上げようとしていたりと、IEの中でもかなりコーヒー業界のつながりが濃いそうです。

 

ここまでお話を聞いてきた中で、岩田さんは「好きなこと」と「つながり」というもの、そして自分が正しいと思う方向にエネルギーを使うことをとても大切にしていると感じました。

VERVEのビジネスも、足が長くTangibleなビジネスで、岩田さんのライフスタイルともつながっているからこそずっと続けられる、そう思っているそうです。

IEはUnlearnできた場所

IEは、自分の中でUnlearnのプロセスを経験出来た場所ですね。一度自分の価値観をリセットしたかったんです。アメリカのような英語圏でもなく、いわゆるエリートっぽくない環境なので、自由になれた気がしました。そこでUnlearnして、知識も入れなおして、人間関係もいろんなひとと構築しなおして。サラリーマンのときに自分の中で凝り固まったものが解放されていく感じでした。そのあと、いわゆるPost MBAらしい仕事を選ばず、自分のやりたい方向をもう一度見つめなおせた。そういう人間になれた、と思いました。

MBAのテクニカルなことは実際いまでも使ったりしますけど、やっぱり、Unlearnして、もう一度学びなおすって事。それが一番大事でした。アントレやインターナショナルビジネスの科目をたくさん選択していましたし、コーヒーは中南米産地多いですし。IEから結構色んな影響受けてますね。だから、全部つながってるんです。


では最後に、これからIEへ行く人へのメッセージをお願いします!


いつも言うのは、人生の経験として留学って良い投資だと思う。ROIで見るとどうかはわからないけど、人生の経験としてすごく良い。あのインターナショナルな環境、濃厚で貴重な一年。Unlearn、一度クリーンにして別のことを入れなおすと違う景色が見えて、自分らしくいられる。キャリアって自分が思っている以上にもっと自由なもののはずだから。選択肢は無限です。


VERVE Coffeeは現在JR新宿駅新南口改札を出てすぐのところと、今回訪問した鎌倉の鶴岡八幡宮にむかう大通り、若宮大路にあります。

CAを感じさせる明るくオープンな雰囲気のお店の中、Tシャツやマグカップなどオシャレな小物も扱っています。美味しいコーヒーだけではなくライフスタイルそのものを提案しているようなお店です。

 

岩田さんのお話を伺って、好きなことを仕事にする、そのひとつの方法として起業があり、IEはその起業の夢へ一歩近づけるような場所だと、改めて思いました。

 

(寄稿:IMBA卒業生 M)